ジェット旅客機はシナに出來て何故日本に造れなかつたのか 広報局長 藤井超英

八億枚のシャツを輸出して一機の飛行機を買ふと云ふ歴史から脱却 
 
 シナ共産黨政府は、初の國産ジェット旅客機C919の開發を行ふ國有メーカー中國商用飛機(COMAC)を使つた中國東方航空のMU9191便は、五月二十八日 現地時間の午前十時三十二分に上海を出發。午後0時三十一分に北京首都國際空港に着陸すると、歡迎の放水アーチで出迎へられた。中國メディアは「八億枚のシャツを輸出して一機の飛行機を買ふ」と云ふ歴史から脱却したと述べてゐる。 一方で、三菱重工業は令和二年十月に「三菱スペースジェット(MSJ)」日の丸ジェットの開發を中止すると發表した。平成二十年に三菱航空機を設立してから十五年。平成二十五年に豫定してゐた初號機の納入は六囘も延期を繰り返し、これまでに投入した開發費は一兆圓を超える。經濟産業省もYS11以來の國家プロジェクトとして五〇〇億圓の補助金を投入したが、量産前の最後のハードルである米聯邦航空局からの型式證明(TC)を取得する直前での事業を斷念した。 
 
政府の支援は十分だつたのか? 
 
 コロナ禍を理由に開發を凍結してから二年。三菱重工は會見で「開發を再開するに足るものを見いだせなかつた」と説明した。量産開始時期から十年遲れてをり、開發費が約一二〇〇億圓、事業化に七〇〇〇億圓ほどかかると見られてゐた。シナ政府は、西暦二〇〇六年の五カ年計劃で、國産の大型旅客機の開發プロジェクトを立ち上げて以來、十六年の歳月と約十兆圓を投資したが、日本はわづか總額五〇七億五〇〇〇萬圓の補助金を支援し、愛知縣も工場用に土地を確保するなど縣費二十七億四千萬圓を負擔したが、三菱重工の賣り上げ規模は平成十八年度で三兆六〇〇億圓、經常利益は八三〇億圓ほどに對して日の丸ジェットの開發は大きな負擔であつた。 
 
納入延期の殆どが型式證明の役所手續きの遲れに起因 
 
 「三菱スペースジェット(MSJ)」日の丸ジェットプロジェクトの納入延期の殆どが型式證明の取得手續きに關はるものだつた。型式證明とは、機體の設計が安全性基準に適合することを國が審査・確認する制度である。「飛行」「強度」「設計・構造」「動力裝置」「裝備」細かな必要條件が規定されてをり、全分野の要件を足すと四〇〇項目ぐらゐあるが、一つでも滿たせなければ認證は下りない。 
 
國家プロジェクトより大切なのは省益 
 
 國土交通省は、開發據點である名古屋空港に檢査場を開設し、檢査員七十三名で檢査に當たつたが、造る側である三菱航空機のエンジニアからは「國内初のジェット旅客機とあつて基準の解釋や、どうすれば基準をクリアしたことになるのかが分からず、戸惑ひ續けた」(元開發擔當者證言)。 
 機體強度や電氣系統、耐火性能などを立證すべく試行錯誤を續けたが、設計變更をたびたび餘儀なくされた。型式證明を發行する航空機技術審査センターも十分な經驗がなく、經濟産業省と國土交通省が國家プロジェクトを成功させる目的を共有して協力してゐたのか疑問である。 
 
シナ産ジェット旅客機C919の弱點 
 
 シナ製の部品はわづか25%で、その殆どを海外からの提供に頼つてゐるシナ産ジェット旅客機C919の弱點は、米國の對支貿易戰爭などの影響で米國政府は2020年後半から、米國の企業がシナ軍と關係のある企業に部品を輸出する場合、ライセンスの申請を義務附けてゐる。今後シナへの部品の輸出を完全に停止する可能性もある。その場合、C919をすべてシナ製の部品で作り直すためには、十年から十五年が必要になり、部品供給と言ふライフラインを握つてゐるのは米國である。 
 
今後二十年で世界市場の20%に到達 

 米國や歐州の部品を寄せ集めて製造されたシナ産ジェット旅客機C919の品質を疑問視する專門家も多いが、ライバル關係にあるボーイングは今後二十年間に中國が世界市場の約二十%を占めると豫測し、エアバスのCEOもシナ産ジェット旅客機C919の信頼性を世界で實證するには時間がかかるが、「二〇二〇年(西暦)代の終はりまでに、この業界は二社の獨占から三社の獨占に移行することになる」と述べてゐる。政府は五〇〇億圓と云ふ巨額の税金を投入して日の丸ジェットプロジェクト事業を失敗させたにも關らず、新聞報道によると經濟産業省は有識者會議で飛行機開發の目指すべき方向性と題した資料を配布した。原因究明せず、誰も責任を取らない官僚や政治家に期待はできないが、日の丸ジェットが世界の空を羽ばたくその日には心から期待したい。