支那の空母計画に対抗せよ 野田照悠

復刊五号(平成二十六年七月一日)より

皇継承第六位に在らせられた、三笠宮崇仁親王殿下の次男であられる、桂宮宜仁親王殿下が平成二十六年六月八日薨去あそばされました。長きに渡り病と向き合はれながらも公務に尽くされた殿下に対しまして心からの哀悼の意を表します。


ここ数年、海洋進出を活発化させ周辺国との衝突を繰り返し続ける支那は、旧ソビエト連邦が建造を中断してゐた空母「ヴァリャーグ」を平成十年にウクライナから購入し建造再開後の平成二十四年九月二十五日に支那史上初となる空母「遼寧」として就役させた。そして、最近新たに新造空母四隻を保有する計画があると言はれてをり、実際に上海と大連の各造船所に於て建造に着手してゐると支那軍幹部が明らかにしてゐる。この新造空母四隻の内二隻に就いては原子力空母となる可能性が高いと言ふ。新たに建造される四隻の空母は平成三十二年初頭から就役予定とされてをり、これが現実となれば我が国はもとより周辺各国にとつて非常に大きな驚異となることは間違ひ無いであらう。

支那による空母建造計画の全貌とはいかなるものなのであらうか。一部の報道や資料、支那海軍によると建造を開始したと思はれる空母は「〇〇一A型」と「〇〇二型」の二つの形態が存在してゐるらしく、各々大連造船所と上海長興島の江南造船所の南北二大造船所が建造を担当する。また、この二形態の空母は、構造上大きな違ひが見られると言ふ。大連造船所で建造中の「〇〇一A型」には、現有空母「遼寧」と同じく航空機の発艦に艦首を上方に傾斜させた通称スキージャンプ方式を採用する一方で、更に蒸気カタパルトが備へられ満載排水量も「遼寧」の六万七五〇〇屯を上回る。一方「〇〇二型」は上海長興島の江南造船所で建造中であり、米国空母などと同じく平らな飛行甲板を採用し原子力を動力とする予定であらうと報じられてゐる。空母の戦力を発揮する上で尤も重要な基準は、戦闘機の出撃回数と言はれてゐる。因に米国海軍の「二ミッツ」級空母の出撃回数は百六十機/日、最新鋭の「フォード」級に至つては二百七十機/日にも及ぶ。これは米国の経験値によるもので、良好な気象条件下に於いて空母が毎日継続して戦闘機を十五時間出動させるものとして算出されたものである。では「遼寧」の出撃回数はどうなのかと言ふと、様々な資料から尤も好意的な評価を見ても約五十四機/日である。これは「二ミッツ」級空母のわづか三分の一にしかならない。にもかかはらず、建造中と言はれる支那初の国産空母はその「遼寧」を手本としてゐるらしい。その利点として次の三点が考へられる。それは、一、完全な新設計に比べてリスク(危険性)が少ない事。二、建造に於ける時間と経費を節約でき、上層部の要求に迅速な対応が出来る事。三、搭載予定の殱15(露戦闘機Su33を基礎として現在支那が開発中)艦上戦闘機の量産を維持する為には「遼寧」一隻だけでは不十分である事。以上三点が理由と思はれる。しかし、この事を理由として支那が国産空母の技術的要求を緩和させたと言ふ事ではない。支那海軍が求める技術的要求項目には、搭載機の出撃回数が「遼寧」に比べ約二倍、継続戦闘日数三日、巡航速力二十九ノット等、かなり高度な要求が含まれてゐるからである。総合的な戦力は、既に退役してゐる米国の「ミッドウェイ」や仏の原子力空母「ド・ゴール」を凌ぐものとなつてゐる。
ここで支那が建造中とされる原子力空母「〇〇二型」に就いて述べてみたい。支那の原子力空母開発は現在のところ初期段階ではあるが、かなりの早さで進行中との事である。原子力空母は、言ふまでもなく現在世界の最尖端を行く空母である。空母の運用方法は第二次世界大戦以前から現在に至るまで空母のみの単独行動ではなく、航空機、水上艦艇及び潜水艦と一体となつたものであり、水上、海上及び水面下の戦力を統合させた海空一体化が常識となつてゐる。その中でも原子力空母は、通常動力型空母と比較して多くの優越点がある。第一に、原子力と言ふ巨大なエネルギー源を利用し、迅速に現場に赴き、相手に対し替へる事の出来ない脅威と実戦の相乗効果を発揮出来る。第二に、原子力は通常動力と比較して大量の空間と搭載重量を節約させる事が可能で、搭載機の需要を満たす事が出来る。より多くの航空機燃料を搭載出来る一方で、乗組員の居住性と艦内の作業条件を改善する事が可能である。
そして最大の優越点が、原子力空母は途中の燃料補給無しで約五十万海里を航行出来る。これらの事から原子力を動力とする空母には後方支援への依存度を大幅に縮小させる事が可能であり、更には米国などと違ひ海外中継基地に依存しない支那海軍にとつては非常に重要である事は間違ひない。支那軍関係者の話によれば、建造中の空母は南支那海に臨む海南省の軍港に配備される可能性が高いと言ふ。これは、南支那海での軍事活動を活発化させ、フィリピンやベトナムなどとの領有権争ひを優位に進める狙ひがあるのであらう。南支那海への支那海軍の積極的な進出を懸念する米国や周辺国との摩擦はこれまで以上に激しさを増す事は間違ひない。「遼寧」は平成二十五年十一月末から三十七日間、母港である山東省青島を出港し、初めて南支那海での軍事演習を行つた。支那国防部は、東支那海上空に一方的に設定した防空識別圏(ADIZ)を、南支那海上空にも設ける可能性を示唆してゐる。また南支那海での主権の既成事実化も着々と進めてをり、これを裏付けるやうに支那海南省当局は本年一月から、南支那海で操業を行ふ外国漁船に対し支那政府の許可を義務付ける新しい条例を施行し、これを順守しない外国漁船に対しては「不法操業」として厳重に取り締まる方針だと言ふ。かうした支那による一方的な規制に、フィリッピンやベトナム、台湾など周辺国をはじめ、我が国や米国なども強い懸念を示してゐる。御存知の事とは思ふが、我が国は大東亜戦争後から現在に至るまで空母を保有する事は無かつた。
しかし、これまで述べてきた様に支那は急速に海洋進出を押し進めると同時に、空母を中心とした海上戦力の大規模な拡充に邁進してゐる現状を考慮すれば、当然の事ながら四方を海に囲まれた我が国には支那に対抗出来る軍備増強は急務であり、一刻の猶予もならないところまで来てゐる。
安倍晋三政権は速やかに空母を中心とした海上戦力の大幅な拡充に着手する事を要求する!