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支那軍の装備近代化に警戒せよ~支那製ステルス機開発の現状~野田 照悠

近年、支那経済の急成長に合はせて支那軍の近代化が急速に進められてゐる。その中でも特に空軍の装備近代化は凄まじいものだ。その理由として平成二年米国を中心とする多国籍軍とイラクとの間で勃発した湾岸戦争に於る空軍力の絶大なる威力が背景の一つにあると言はれてゐる。支那空軍は昭和二十四年に陸軍から独立したものの、長期にわたり陸軍を支援する存在に甘んじてきたが、湾岸戦争によつて状況が一変した。この戦ひおける空対空戦闘に於てイラク軍の損失三十三機に対し多国籍軍の損失はわづかに一機と云ふ一方的な勝利は、支那空軍のみならず、人民解放軍、更にその上部組織である中央軍事委員会に強烈な印象を焼き付けたと思はれる。中国軍首脳が空軍戦力の優勢が戦ひの勝敗に決定的な影響を持つことを認識したことから、支那空軍はそれまでの陸軍の補助戦力的な位置付けから地位が大幅に向上して、予算配分の優先順位が上がつたと考へられる。特に航空戦力の鍵を握る戦闘機への予算配分が最優先で行はれてきたこ とは、世界を驚かせた第五世代戦闘機『J20』や『J31』の登場がこの事を雄弁に物語つてゐる。更に、戦闘機にとどまらず米国が世界に於て優位を維持する戦略輸送機や無人機の分野でも支那は新型機を相次いで生み出してゐる。
ここで先に述べた支那空軍第五世代戦闘機に就いての概要に就いて簡単ではあるが述べたいと思ふ。『J20』は平成二十三年、米国のゲイツ国防長官(当時)の北京訪問中に衝撃的な初飛行を行つた。しかし米国陸軍戦略研究所が平成十九年に提出した論文の中で、既に支那が二機種のステルス機を開発中であることが明らかにされてをり、平成二十一年後半には支那空軍参謀長が平成二十九年から平成三十一年頃にはステルス戦闘機を配備すると明言してゐた事から十分予測可能であつた。航空機の開発は設計に約三年、試作機製造に約二年を要するのが一般的で、設計開始から試作機完成まで通常約五年は必要となる。その後、初飛行までに各種の地上試験などで約一年と考へて、開発開始から初飛行まで最短でも六年となる。平成二十三年一月に初飛行するためには、遅くとも平成十七年には『J20』の設計が開始されてゐたものとみられ、支那空軍参謀長が自信を持つてステルス戦闘機計画を発表した平成二十一年後半は、丁度試作機が完成した時期に当たるのではないかと推察される。このやうに『J20』の開発着手を平成十七年と仮定すると、量産型に近い試作機が開発着手から九年後の平成二十六年に初飛行した事になり、米国のステルス戦闘機『F35』の開発ペースと比較しても順調な進捗と言へる。しかし支那が言つてゐるやうに平成三十一年頃までに本当に実戦配備ができるのであらうか。今後の技術的課題を考へてみたい。飛行試験の進捗状況は、四機の試作機が西安の支那空軍基地で飛行試験中との報道以外に具体的な情報はないが、初飛行から既に四年が経過してゐる事から飛行性能、特性、構造強度等基本的な試験はほぼ終了してゐると考へられる。新たに生産された三、四号機に適用された設計変更の飛行試験による確認は残つてゐるものの、機体そのものに就いては今後大きな技術的問題はないだらう。懸念されるエンジンは支那産の搭載は現在困難と考へられてゐるが、露から『Su35』を導入し、推力偏向機構を備へるエンジンが手に入れば超音速飛行は可能になるかもしれない。ステルス機では基本的に兵器の機内への搭載が一般的なので飛行試験の回数も少なくて済むが、戦術戦闘機としては機外搭載も必要であり、運用段階に入つてからも長期間の振動試験が必要となるであらう。その他、ソフトウェアを中心とする高度に統合化されたシステムを持つ第五世代戦闘機特有の問題として、ソフトウェアの性能向上とその確認の手間が必要となる。過去に於て『F35』の開発遅延の最大の要因がそれであり、難しさを物語つてゐる。『J20』も今後の搭載機器の飛行試験によつて多くの設計変更が考へられるが、『J20』が本当の第五世代戦闘機であれば、一つの不工合対策がシステム全体に影響を与へる事となり、厖大な検証作業が必要な事を覚悟しなければならない。
また、搭載電子機器の機能、性能に関する情報も公表される事はないであらう。しかし、情報がなくても、攻撃システムとしての完成度は現代戦闘機の主兵器である中距離対空ミサイルを用ゐた発射試験の結果によつて、或程度は判断できる。目標捕捉後、最大射程で発射する為に機体を超音速まで加速し発射するのが中距離ミサイルの標準的な流れである。ステルス戦闘機の特徴である兵器機内搭載の最大の技術的課題は、衝撃波など様々な影響を受ける厳しい状況に於て格納扉を開き、ミサイル等の兵器を自らの機体に接触させる事なく安全に発射する事である。また『J20』は複数目標同時攻撃能力を持つと考へられ、発射試験でこの能力も実証できれば完璧であるが、諸外国でも最大機能や性能を実際に飛行試験で証明する事は殆んどなく『J20』もそこまで行ふ事はないであらう。では、その完成時期はいつ頃になるであらうか。『F35』の例では、空軍向け仕様のA型が平成十八年十二月十五日に初飛行し、平成二十五年十月三十日に初めての実弾発射試験を行つた。初飛行から七年後である。『J20』の三、四号機を『F35』相当の性能と仮定し、そのまま当てはめれば平成二十六年の初飛行から七年後の平成三十三年が初の実弾発射試験と言ふことになる。現在『F35』の運用開始は最初の実弾発射試験から三年後の平成二十八年十二月に予定されてゐるので、『J20』も同様に考へれば実弾発射試験から三年後の平成三十六年頃になるのではと推測できる。次に、二機目のステルス戦闘機『J31』は平成二十四年十月三十一日に初飛行し『J20』の初飛行から二年以内に行はれた。『J31』の唯一の試作機は戦闘に必要な装備を搭載してゐるやうには見えず『J20』の一号機と同じく飛行に必要な機器以外は未搭載ではないかと考へられる。飛行試験がこれまで六回行はれてゐると思はれ、二号機が最終組み立ての段階に入つてゐるとの報道がある以外、他の情報は皆無である。三、四号機の初飛行など着々と進捗してゐる『J20』とは対照的だ。『J31』は『F35』に似てゐると言はれるが、寸法や重量は『F35』に近いものの、形状は米国で実戦配備されてゐる『F22』に非常によく似てゐる。支那空軍は装備近代化の一環として老朽化した第二、第三世代機の退役を進める一方、数を信奉する支那軍としては第四世代機にあたる『J10』や『J11』とともに第五世代の新たな量的存在『J20』の補完戦力として『J31』を活用すると思はれる。また、この二機種以外にも垂直離着陸機と思はれる『J18』の報道や露から『Su35』を導入する動きがあり、支那は今後も引き続き戦闘機の近代化を最優先で取り組んでいくだらう。現在、安倍政権に於て自衛隊の装備近代化が僅かながら進んでゐるが、これまで述べたやうに支那は他国を圧倒する勢ひで質、量共に装備の充実を図つてゐる。我が国政府に対し一刻も早い対応を求めるものである。