美しい日本の四季を守れ 武田 世

 日本は四方を海に圍まれた緑濃き美しい國である。また他國にはない春夏秋冬の四季がはつきり分かれてゐる國でもある。他にも北極や南極、赤道直下を除いては殆どの國に四季は存在してゐるが一つか二つの季郎が長か つたり氣候が違つたりと曖昧だつたりする。 日本のやうに三ヵ月單位で季節や氣候、氣温が移り變はる國はあまりないと思ふ。 
 ではなぜ日本の四季ははつきりしてゐるのだ らうか?調べてみると日本は國であるので 海流の影響を受けて氣候が變はりやすく、まに國土が二十四度から三十五度と中精度に位置 してゐる爲に四季がはつきりしてゐるさうで、基本的に低緯度に位置する熱帶地域の國は赤道に近い爲に暑く、高緯度の寒帶地域の國は赤道から離れる爲常に寒くなる。中緯度の温帶に位置してゐる日本は季節ごとの氣壓や海流によつて大きく氣候が左右される特徴を持つてあるからださうだ。また日本の四季は地域によつて大きく異なる。日本は長さが約 二十七百八十七キロと南北に長い國であり、北に位置する北海道は亞寒帶地域に分類され 氣温や濕度が低く寒いといふ特徴がある。また南に位置する沖繩縣は一年を通じて氣温や 濕度が高い亞熱帶地域だ。また日本海側と大 平洋側とでも氣温や氣候が異なる事も珍しく なく、夏は暑く冬は寒いといふ點では同じでも地域によつては違ひが出てくるのが日本の四季の特徴である。しかしながら近年では地 球温暖化によつて三ヵ月ごとにはつきり變はるはずの四季が氣温の上昇によつて夏と冬が 長くなり、春と秋が短かく曖昧になつてきて いる事も事實である。この先近い將來日本の 四季が二季になつてしまふ可能性も充分考へ られる。このやうな日本の四季ではあるが四季を愛でるといふ氣質があるのは私達日本人 だけではないだらうか? 例へば日本には古 くから季節の變はり目を詩にする文化があり枕草子の冒頭では「春はあけぼの やうやう 白くなりゆく山ぎは、少しあかりて 紫だちたる雲の細くたなびきたる」とあり、山の稜線の明るさや紫がかつた雲の樣子に春の風情を感じると記されてをる。このやうに季節の變はり目は何でもない氣候や氣温の變化に過ぎないが、そこに注目して觀察し價値を生み出してきたからこそ四季を樂しむ風土が整てゐると言へる。 
 また日本人には季節ごとに行事を行ひ祝つてきた歴史がある。八百萬の神と言はれるやうに日本では萬物に精靈が宿り自然そのもの が神であると言ふ概念がある。神々をなだめ共存していく爲に季節や節目ごとにお供へを するやうになつた。その季節ごとの祭りや 行事には神道的な意味があり季節の變はり目 に着目する事は信仰や感謝と結びつけられてゐるのである。四季の移り變はりに對して感謝し樂しみ愛でると言ふ事は古來より日本人特有の氣質なのだ。只、先にも述べたやうに現在進行中であらふ地球温暖化によつて季節の間隔が曖昧になりつつある事は確かだ。この事に就いては誰もが知るやうに日本國内だけの問題ではなく世界規模の大問題である。この地球温暖化の原因に就いて私が考へるには現在に至るまで 私達人間が快適さを求め過ぎた事と快適さに 慣れ過ぎた事にあると思ふ。だが誰しもこのやうな事態にならふとは想像もつかなかつただらう。それに氣附いた今、私達は他人事のやうに捉へる事なく身近な所からでも高い意識と危機感を持つて努力改善していかなければならない。 
 五十年先、百年先の爲にも。