一六六一詔 大日本帝國憲法發布の上論(明治二十二年二月十一日)

朕(ちん)、祖宗(そそう)ノ遺烈(ゐれつ)ヲ承(う)ケ、萬世一系(ばんせいつけい)ノ帝位(ていゐ)ヲ践(ふ)ミ、朕(ちん)カ親愛(しんあい)スル所(ところ)ノ臣民(しんみん)ハ、即(すなは)チ朕(ちん)カ祖宗(そそう)ノ惠撫(けいぶ)慈(じ)養(やう)シタマヒシ所(ところ)ノ臣民(しんみん)ナルヲ念(おも)ヒ、其(そ)ノ康(かう)福(ふく)ヲ増進(ぞうしん)シ、其(そ)ノ懿德(いとく)良能(りやうのう)ヲ發(はつ)達(たつ)セシメムコトヲ願(ねが)ヒ、又(また)其(そ)ノ翼贊(よくさん)ニ依(よ)リ、與(とも)ニ俱(とも)ニ國家(こくか)ノ進運(しんうん)ヲ扶持(ふぢ)セムコトヲ望(のぞ)ミ、乃(すなは)チ明治(めいぢ)十四年(じふねん)十月(じふぐわつ)十二日(じふににち)ノ詔(せい)命(めい)(第一六一九詔参看)ヲ履踐(りせん)シ、茲(ここ)ニ大憲(たいけん)ヲ制定(せいてい)シ、朕(ちん)カ率(そつ)由(ゆう)スル所(ところ)ヲ示(しめ)シ、朕(ちん)力後嗣(こうし)及(および)臣民(しんみん) 及(また)臣民(しんみん)ノ子孫(しそん)タル者(もの)ヲシテ、永遠(えいゑん)ニ循(じゆん)行(かう)スル所(ところ)ヲ知(し)ラシム。國家(こくか)統治(とうち)ノ大權(たいけん)ハ、朕(ちん)カ之(これ)ヲ祖宗(そそう)ニ承(う)ケテ、之(これ)ヲ子孫(しそん)ニ傳(つた)フル所(ところ)ナリ。朕及(ちんおよび)朕(ちん)力子孫(しそん)ハ、將來(しやうらい)此(こ)ノ憲法(けんぱふ)ノ條章(でうしやう)二循(したが)ヒ、之(これ)ヲ行(おこな)フコトヲ愆(あやま)ラサル。

朕(ちん)ハ我(わ)カ臣民(しんみん)ノ權利(けんり)及(および)財産(ざいさん)ノ安全(あんぜん)ヲ貴重(きちよう)シ、及(および)之(これ)ヲ保護(ほご)シ、此(こ)ノ憲法(けんぱふ)及(および)法律(はふりつ)ノ範圍(はんゐ)內(ない)ニ於(おい)テ、其(その)ノ享有(きやういう)ヲ完全(かんぜん)ナラシムへキコトヲ宣言(せんげん)ス。

帝國(ていこく)議會(ぎかい)ハ、明治(めいぢ)二十三(にじふうさん)年(ねん)ヲ以(もつ)テ之(これ)ヲ召集(せいしふ)シ、議會(ぎくわい)開會(かいくわい)ノ時(とき)ヲ以(もつ)テ、此(こ)の憲法(けんぱふ)ヲシテ有效(いうかう)ナラシムルノ期(き)トスへシ。

將來(しやうらい)若(もし)此(こ)ノ憲法(けんぱふ)ノ或(あ)ル條(でう)章(しやう)ヲ改定(かいてい)スルノ必要(ひつえう)ナル時(じ)宜(ぎ)ヲ見(み)ルニ至(いた)ラハ、朕及(ちんおよび)朕(ちん)カ繼(けい)統(とう)ノ子孫(しそん)ハ、發議(はつぎ)ノ權(けん)ラ執(と)リ、之(これ)ヲ議會(ぎかい)二付(ふ)シ、議會(ぎかい)ハ此(こ)ノ憲法(けんぱふ)ニ定(さだ)メタル要件(えうけん)ニ依(よ)リ之(これ)ヲ議決(ぎけつ)スルノ外(ほか)、朕(ちん)カ子孫(しそん)及(および)臣民(しんみん)ハ、敢(あへて)テ之(これ)力紛(ふん)

更(かう)（註一）ヲ試(こころ)ミルコトヲ得(え)サルへシ。

朕(ちん)カ在廷(ざいてい)ノ大臣(だいじん)ハ、朕(ちん)カ爲(ため)二此(こ)ノ憲法(けんぱふ)ヲ施行(しかう)スルノ責(せめ)ニ任(にん)スへク、朕(ちん)カ現在(げんざい)及(および)將來(しやうらい)ノ臣民(しんみん)ハ、此(こ)ノ憲法(けんぱふ)ニ對(たい)シ、永遠(えいゑん)二從(じゆう)順(じゆん)ノ義務(ぎむ)ヲ負(お)フへシ。(官報)

註一　秩序なくむやみに改め変へる事

承詔必謹